商品を買う “正当な価格”がある
子どもたち、君たちに聞きます。
「電気屋さんで本当なら10万円以上するテレビが、
1万円で売っていたなら、それを買いますか」。
多分、ほとんどの人が「買います」と答えるでしょう。
子どもたち、お母さんに聞いてみてください。
「八百屋さんで、大根が1本5円で売っていたら買いますか」と。
まず間違いなく、ほとんどのお母さんが、「買います」と
答えるでしょう。子どもたち、私は、これが許せません。
商品を、安く買うことは、
ある意味で一つの殺人行為だとすら考えています。
子どもたち、1台のテレビを作るには、材料代が必要ですし、
それを組み立てる人たちへの賃金が必要です。
当然、金属や木材、プラスチックなどの材料代を安くすることは、
どんなに企業が努力しても、少ししかできませんから、
テレビの価格を安くするためには、この賃金を減らすことになります。
テレビを1万円で買うことは、
汗を流し必死にそのテレビを作っている人たちの生活の糧である
賃金を減らすことになるのです。大根も同じです。
種を買い、肥料を使い、丁寧に農家の人たちが育てています。
当然、種代や、肥料代を減らすことはほとんどできません。
それを5円で売るということは、この農家の人たちが大切な
生きる糧である収入を失うということなのです。
子どもたち、今私たちの社会は狂っています。
多くの人が、少しでも安い商品を手にしようと、駆け回っています。
でも、商品にはそれぞれ正当な価格があります。
それより、商品を安く買うということは、
それを作っている人の収入を奪うことになります。
ましてや、異常に安い商品には、それを手塩にかけて作った人たちの
涙がこもっています。君たちは、誰かを泣かせてまで、
そんな商品を欲しいと思いますか。
子どもたち、アメリカから始まった不況の嵐の中で、
今多くの中小企業が仕事を失い、多くの社員たちが、
職を失っています。また、大企業でも、工場の生産縮小の中で、
多くの派遣社員たちが、職を失っています。
子どもたち、お願いです。
お母さんやお父さんに伝えてください。すべての商品は、
その価値に見合う価格で買おうと。
それが、多くの人たちやその家族の子どもたちを救うことになると。
そして、君たち自身を救うことにもなると。
【夜回り先生のエッセー】https://www.chunichi.co.jp/article/feature/yomawari/list/CK2008120102000197.html
から引用させていただきました。